講演会 報告①:「イラン戦争の現状」

2026年

講演会:「イラン戦争の現状」2026 年7 月㏤(土) 10 時~12 時
講師:森田豊子氏 (元在イラン日本大使館専門調査員・現横浜市立大学客員研究員)
場所:鹿児島市民福祉プラザ 5 階 参加者 37 名

 7 月5 日に開催した「イラン戦争の現状」の講演内容を一部紹介します。
森田豊子先生は、2023 年11 月から2025 年まで在イラン日本国大使館の専門調査員として、テヘランに滞在しておられました。それ以前に、2019 年11 月15 日イランで発生した反政府抗議デモに遭遇され、その時に体験された経験も含めて、お話をしてくださいました。

イラン — 社会と文化

  • イランのイスファハンという所にあるイマームのモスクはサファヴィ朝時代、
    17世紀に建てられた建造物。世界遺産になっている。
  • サファヴィ朝というのは、ヨーロッパが近代になってどんどん発展する前に、イスファンは、世界の半分と言われる文明を誇る街であった。
  • 街のど真ん中に大きな川が流れており、その川の北側にあるモスクの広場も世界遺産になっている。
    この広場で、イランの人たちは、敷物を敷いて、お茶を飲んで、おしゃべりをする。
  • イラン人の大事な娯楽の一つが「おしゃべり」であり、家族・親戚・近所の人々とお茶を飲みながら政治や日常のとりとめのない話をすることである。
  • 日本では、お酒を飲まないと本音を言わない人がいるが、イランではイスラム教なので、お酒を飲まないが、本音で語り合うことができる。
  • 日本の学生を連れてイランを研修訪問した際、世界遺産の広場で平和に過ごす市民の姿を見て、自分たちがイランに抱いていた“危険な国”という先入観との乖離に驚いた学生たちの話(以下)。

『みんなが平和にお茶を飲んで、楽しく世界遺産でお茶飲んでる姿を見て、その夜の、反省会の中である学生がいきなり泣き出したんです。
 『世界遺産でお茶飲んでる姿を見て、私はびっくりしました。 世界ではここは危険でテロリストが
いっぱいて、怖いところだって言われていたのに、この平和な状況を見て、私はどうしたらいいか、
その自分の先入観に驚かされました』って泣き出したんですね。
で、それを見た一緒にいたイランの人たちも感動して泣き出して、なんか一緒に泣いていた。
 みんなが泣いていた、そういう経験があります。 普通の人、普通のイランの人たちは普通に暮らしていて、本当に平和に日々暮らしているだけなのにっていうところはあります。』

  • 国民の約90%がイスラム教徒だが、現体制(イスラム法体制)への支持は低下しており、現在は約2 割程度が体制支持者とされる。
  • 若者層はイスラムを利用した昇進・大学入試制度、経済制裁による自己実現の阻害に強い不満を持ち、2009 年頃から断続的にデモが発生している。

中東の歴史的および地形的背景

  • 「中東」はヨーロッパから見て東に位置することに由来し、アフガニスタンからモロッコまでの地域を指す。
  • 植民地時代の構造:
  • イギリスの影響圏:インド、イラク、サウジアラビア、ヨルダン、エジプト
  • フランスの影響圏:シリア、レバノン
  • 緩衝地帯として機能:イラン、アフガニスタン、トルコ(オスマン帝国)
  • アフガニスタンは石油が出なかったため放置され、近代的インフラが整備されないままタリバンが台頭。
  • 中東戦争(パレスチナ問題):
  • 1948年のイスラエル建国以降、4回の中東戦争(1948・1956・1967・1973年)が発生。
  • 現在もガザ・ヨルダン川西岸はイスラエルによる占領下にある。
  • 2023年10月7日のハマスによるイスラエル攻撃・人質事件を契機に、イスラエルの報復攻撃が継続中。
  • アメリカの中東政策(二本柱政策):
  • 冷戦期、イランとサウジアラビアを「二本柱」として中東の安定を維持しようとした。
  • 1979年のイラン革命後、イランは反米国家となり、アメリカはイランを封じ込め政策の対象とした。
  • 9.11以降、アメリカは中東に直接軍事介入するようになった。
  • イスラエルを守る構造的要因:
  • アメリカ国内のユダヤ人ロビーの強大な政治力。
  • 福音派(エバンジェリカル)の「聖書の預言実現」という信念(エルサレムはユダヤ人の手に渡るべき)。
  • イスラエル批判は欧米で事実上タブー化されており、批判した研究者・政治家が職を失う事例が多数存在する。

イラン戦争(2026年)概略

  • 開戦:2026年2月28日、アメリカ・イスラエルによるイランへの攻撃(国際法違反)。
  • 主な出来事:
  • ミナブ市の小学校が空爆され、167名の児童生徒が死亡。この数字はワールドカップでもイランサポーターが掲げた。
  • イランはイスラエルおよび周辺のアメリカ軍基地に反撃し、戦争状態が継続。
  • ハメネイ最高指導者が戦争開始直後に殺害。後継者はハメネイ師の息子。
  • 国葬は7月4日(アメリカ独立記念日)に実施。
  • ドバイ空港が攻撃を受け、留学生の往来が一時停止するなど国際的影響が発生。
  • ホルムズ海峡封鎖:
  • 最狭部約30kmのホルムズ海峡が事実上封鎖され、アジア向け石油供給が滞った。
  • 世界的な石油価格・燃油サーチャージの上昇を招いた。
  • 停戦プロセス:
  • 4月7日:アメリカ・イラン間で2週間の戦闘停戦合意。
  • 4月21日:無期限戦闘停止が成立。
  • 6月18日:トランプ大統領とペゼシュキアン大統領が覚書に署名。
  •  ホルムズ海峡の通航再開
  •  イランへの3,000億ドル規模の復興支援
  • 署名から60日以内(8月中旬頃まで)に最終合意を目指して協議中。
  • 核施設(ナタンズ):
  • イスラエル・アメリカによる攻撃を受けたが、地下深くに建設されたため破壊を免れた。
  • IAEAの査察はまだ実施されておらず、現状は不明。

現状とこれから

  • 戦闘は停止しているが、経済制裁は継続中であり、根本的な問題は何も解決していない
  • 変化の兆し
  • アメリカ国内でイスラエルのガザ攻撃・イラン攻撃への支持が若干低下している。
  • ネタニヤフがアメリカで「イランの危険性」を訴えようとした際、制止される場面があった。
  • サウジアラビアがアメリカへの依存を明言せず、「周辺国との連携で中東を守る」と発言するなど、中東の自立志向が高まっている。
  • イランの外部攻撃による体制転換は困難:外部から攻撃されると、国内の反体制派も「イランを守れ」という方向に結束してしまう逆効果が生じた。
  • 今後の焦点はトランプ政権の方針転換、アメリカ若者層のイスラエル離れ、福音派の動向など。

映画の紹介

一つ目は「アルゴ」アメリカ映画

『1979年のイラン国内で大きな革命が起きたんです。

革命が起きた時に何が起きたか。 アメリカ大使館が人質に取られました。444日間、アメリカ大使館の職員というのは留め置かれました。人質にされた。これも国際法違反なんですが。

今イランに行くと、アメリカ大使館って昔は入れなかったんですが、今博物館になっております。入場料を払って中に入れる。ここが大使がいた部屋とかそれ、その展示場に、スパイの巣窟っていう名前がついていて、アメリカ大使館っていうのはスパイ、スパイの巣窟であると。アメリカ大使館で何が起きたか。

その頃、アメリカ大使館のスパイたちがイランの中で国王と結託して、どれだけ人々から搾取しようとしていたのかっていうのを、その建物の中に入っていくと、いろんな展示があってわかるんです。

そこで、一番面白いのはその革命が起きた時にシュレッダーを、その大使館員はシュレッダーにかけたんです、いっぱい資料をガーッと。 極秘資料を。その後大使館が占領された後、イランの人たちがそのシュレッダーにかけられた、資料をつなぎ合わせたんです。その状況を、全部、博物館の中で見ることができる。

アルゴっていう映画の中ではそれを子供たちにやらせたという。 子供たちにやらせたんだっていう風にして出てきますが、でも多分子供たちも大人たちも一緒になって、あのシュレッダーの、あの極秘資料を復元させたっていうような話もあります。

これは事実だったようです。だからイランの人達は、細かい作業をちまちまと長い時間かけて本当に頑張る人達なんです。

だから今回戦争が起きても、ちょっとやそっとでは絶対もう引き下がらないとやっぱり思っていました。 十二日間戦争って、その前の戦争はアメリカがやめろって言ったからやめたんですが、今回のイランはすごい本気だろうなというふうに思っています。』

2つ目は「シンプル・アクシデント」

「シンプル・アクシデント」これはイランの映画です。

ある本当に普通の人が、自分が政治犯として収監されていた時に聞き慣れた義足を引きずる音に気がつくんですね。「こいつだ。 俺を拷問にかけたのはこいつだ」気づくんですね。

そして、衝動的にその義足の男性を、拉致してしまいます。そこから始まる物語で。 その中に出てくるのは本当に普通のおじさんなんです、その人も。

本当に普通のおじさんとか、本当に普通のお姉さんが、あの、ものすごい傷を抱えている。拘束されてた時に受けた傷ですね。拘束されて出てきた人が普通の暮らしをしてるんですが、なんかそういうその義足の足の、なんかちょっとしたきっかけで、ハッと、なんていうのかな、引き戻されてしまう。

それで、それを聞いて、もうこいつをなんとかしてやらないとっという風に 、拉致した男性をどうするかっていう話。

でも拉致した男性が本当にその時の拷問をした人物なのかどうかっていうのも最初わからない状態です。 そういうところで物語はどんどん進んでいくんですが、本当に普通の人なんですよ。私がお付き合いしているイランの人たちも本当に普通の人なんですよ。

でもものすごい勢いで、あの政府の悪口とか、まあ外国人ですから、聞いたりします。 そういう人たちがいて、自分がやりたいことを実現したいことができない。それは一つ経済制裁もあります。イランがアメリカと対立しているから、自分が行きたいところに行けない、自分がやりたいことできない。私はダンスが大好きなんだけど、ダンスできない。

イスラムだからって止められているとか、あとは経済制裁だからといってヨーロッパが全く、相手にしてくれないこととか、いろんなものが重なっているんですが、自己実現が全くできない状況に若者たちはむちゃくちゃ苛立っています。 経済制裁がもう何十年も続いていますから、経済制裁によってやりたいことがやれないことに若者たちはものすごく憤っています。 それで、大統領選挙の結果でみんな、憤って、全国的なデモになったんですが、おそらく全国的なデモがいつあってもおかしくない状況ではあります。 若者たちは怒っています。 だからといってアメリカが攻撃していいという話ではなかったですね。アメリカが攻撃して国内の人たちが「じゃあ政権倒そう」とはならなかったです。 逆にイランを守れっとなってしまう。

逆に自国であるイランを、攻撃されたら分断してる場合じゃないぞってなります。 で、今回そうなっています。 でも、おそらくそれが抜けたらどうなるかっていうのは、今のところまだわかりません。

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