人々が政府に不満を持っている場合、「市民イニシアチブ」を立ち上げることができる国・スイス

2024年

 スイスに住む知人(60代・男性)とメール交換をしています。
スイスは、地理的にドイツ、フランス、イタリアなどの大国に囲まれながらも、永世中立国としてあり続けています。(ウクライナ情勢より今後はその立場が維持できるか危ぶまれているようですが。) 
参照→スイス 武装した永世中立国―1-歴史と将来像(1)

他国への侵略や自国内での戦闘や壊滅的な空襲・空爆などの歴史を持たないスイス国民の人々は、日本の先人たち(祖父母や父母など)のように戦争による辛くて、悲しくて、苦労した、悲惨な体験をもたないのだろうなぁと羨ましく考える事があります。そして、日本も永世中立国になることができればと願うのですが。

 さて、先日、知人より以下のようなメールが届きました。

そのメールの最後に、彼から「スイスの政治制度をどう思いますか?」との問いかけがありました。
政治的決定に参加する権利「市民イニシアチブ」(国民発議)を行使しているスイス国民の人々と今、日本で暮らしているそれぞれの我が有り様に向き合いながら一緒に考えて頂きたいと思い、記事にしました。「イニシアチブ」とは。

 以下↓のWeb記事を補足としてご参照ください。
 スイスの年金改革が再び国民投票へ 何が争点に。

知人より 3月7日

先週の日曜日、スイスで全国投票がありました。
労働組合と社会民主党は二年前に「市民イニシアチブ 」を立ち上げ、提出した。
この「市民イニシアチブ」のテーマは、各年受給者がボーナスのような形で毎年 13 番目の追加年金を受け取るべきだということでした。

人々が政治に不満を持っている場合、「市民イニシアチブ」を立ち上げることが出来ます。

10万国人がこの動議に署名した場合、政府はこの動議に対して採決を行わなければなりません。
有権者の過半数がこの要請に同意した場合、法律を調整する必要があります。
先週の日曜日、有権者の過半数(58%)は、国の「老齢社会保障制度」が2026年から年金受給者に13番目の年金を支払わなければならないことに同意した。

過半数がこの要請に同意した理由は、最近、家賃と健康保険料が非常に値上がりしており、インフレにより一部の高齢者が生活費の支払いが困難になっているためだ。2026年にはもっとお金が増えることを楽しみにしています😊
スイスの政治制度についてどう思いますか。

3月15日

スイスの老齢年金制度について、さらにいくつかのポイントをご紹介します。
今、13番目の年金の財源について大きな議論または議論が始まりました。
もちろん、誰かがその費用を支払わなければなりません。 議論中のいくつかの提案は次のとおりです。

– 「付加価値税(VAT)」の引き上げ。 今は8.1%です。 年金受給者を含む全員が影響を受けるため、これは不公平だと考える人もいます。

– 勤労者の賃金控除を増やす。 現在は従業員と雇用主が両方5.3%です。 若い人たちはそれが好きではありません。

- 国税の増税。 国税は各人の年収に応じて決まります。 裕福な人はそれを好みません。

- 新たに国の相続税を創設する。 相続税制度は各都道府県によって異なりますが、非常に低いです。 親から財産を相続するのは労力も必要ないので、それは良い考えだと思います。 20000万円までの遺産は無料のはず。

国会でのこの議論には長い時間がかかるでしょう。
それがスイスの民主主義のマイナス点であり、政治的決断には時間がかかります。

最初の 13 回目の年金は 2026 年の初めに支払われます。
上で述べた提案のうち、議会はおそらく混合したものを作成することになるでしょう。

知人が書いていますが、「国会での議論には長い時間がかかるでしょう。それがスイスの民主主義のマイナス点であり、政治的決断には時間がかかります。」と、これは民主主義としては当然のことだと思います。

ひるがえってみれば、時間がかかることが民主主義だと思うのです。地域の会合などでは、多数決が民主主義だと言い、早々に物事の結論をだしたがる。そんなことばかりのように思えます。

「市民イニシアチブ」(国民発議)という権利を行使し、政治は自分たちの暮らしの安寧の手段として、そのために自分の意思表明の行動をしていく。今、日本でもINIT国民発議プロジェクト というのがあるようです。
 「知らないうちに戦争が始まっていた。」と、発言してしまう自分を誕生させないために、他の国を知ることで、日本が向かいつつある未来には自分が関わっていることを忘れずにいたいです。

日本とスイスの国民投票制度について(Wikipediaより)

日本
日本国憲法では憲法改正の際の国民投票のみが規定されており、日本国憲法の改正手続に関する法律が存在する。また地方自治制度では、自治体の住民を対象として一定の住民投票の制度が設けられている。

スイス
議会の提案で憲法を改正する場合には、投票者の過半数が賛成していることと、賛成票数が過半数を越える州が、12.5州以上であることを同時に満たさねばならない。(準州は、0.5 州として計算される)。他にも、他国との条約の締結や、国際機構への加盟を批准する場合に、この方法が用いられている。国民の提案で憲法を改正する場合には、国民10万人の署名を集めることで憲法改正を議会に要求することができる。その後、国民による再審議を経てレファレンダムを行い、国民投票によって改正の可否を問うことができる。また、連邦議会によって議決された憲法以外の法案については、国民5万人の署名を集めることで、国民はレファレンダムを行うことができる。レファレンダムでは、全ての国民に対し再審議を求めることができ、これを経て国民投票を行う。投票終了後の開票結果が、その法案に対する議決となる。

スイスのレファレンダムと国民投票を主導するのは、議会ではなく国民である。このような参政権の形態はイニシアティブ(国民発議)と呼ばれている。日本をはじめ、他の国の間接民主制でいう国民投票と大きく異なる点は、議会が国民投票を主導しないことと、国民投票で議決された事項を、再び国民投票にはかるためのイニシアティブ(国民発議)の制度が定着していることである

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