映像・番組ディレクター 宮本友介氏
著者の山本さんが広島での訓練を終え、福岡市に到着した昭和20年7月。街が灰塵に帰した福岡大空襲の翌月です。その街で出会ったクロと名付けた子犬。山本さんや隊員たちがクロと暮らす中で、ベニヤ板の粗末なボートに乗って敵艦に突撃することを一瞬でも忘れることができたのなら、それも山本さんにとっての戦争体験だと思うのです。
僕が戦争体験者の方々にお話を伺って、映像に残すという仕事に関わって10年が経ちます。そしてわかったのは、本物の戦争の話に教訓めいたものはないということ。戦争体験を語る方々は行動規範を示したりもしません。少し遠くに目をやりながら、カメラを向けるこちらではなく、ご自身に対して言って聞かせるように、悪意や暴力に晒された日のことを語ります。
戦争の話に起承転結はありません。体験者の方々が、二度と戦争だけはしたくないと祈るのに、今現在も戦争行為が世界中で行われる限り、覚めることのない悪夢なのです。
これら戦争の話が本当の結末を迎えるのは、我々戦争を知らない世代が連綿と語り継ぎ、殺したり殺されたりの戦争行為というものがおとぎ話の存在になった時なのでしょう。
僕が戦争体験者の方々にお話を伺い続ける理由のひとつです。
宮本 友介さん 紹介
宮本 友介さんは、「未来に残す 戦争の記憶 -Yahoo! JAPAN」というWebを製作されておられます。
これは、戦争の記憶と記録を、デジタルの力で伝え続けていく特集です。
戦争体験を伝える機会が失われつつあるなか、日本各地の空襲被害を体験した人の証言とともに戦争を体験した人々の話を未来へ語り継いでいく。
是非、多くの方に見ていただきたいと思います。
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山下 春美
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