2023年9月5日(火)から10日(日)まで、開催されていた美術展を観に行ってきました。
「象るふるまい」 場所:レトロフ千歳ビル2階
「日常へのまなざし」 場所:鹿児島市立美術館(地下講堂)
美術展の主催は、「かわるあいだの美術実行委員会」という鹿児島在住の美術作家さんとキュレーターさん達で構成されている団体です。
『かわるあいだの美術実行委員会』
既存の価値を揺さぶり越えていくため、同時代性を反映させた現代美術との出会いを鹿児島で作ることを目的に2020年に組織、始動。2021年「生きる私が表すことは。鹿児島にゆかりの現代作家展」を長島美術館で開催。2022年に記録集を発行した。お問い合わせ↓作家の紹介などがより詳しく載っています
『かわるあいだの美術実行委員会』
今回は、「象るふるまい」展に展示されていた作品とキュレーターの原田真紀さんの
コメントを紹介させていただきます。
「象るふるまい」展は、ともすれば、かき消される小さな声やつぶやき、ささやかな態度を形にする「行為」をテーマにした展覧会です。情報過多の時代、大きな声や力ばかりに注意が行きがちですが、まわりを見渡すと自分の生活をじっくり見つめ、表現という態度で示す人々がいます。
美術作家のさめしまことえさんは鹿児島での日常生活で感じる違和感を、いくつかの場面を組み合わせた絵画作品で問いかけます。そこには画一的な義務教育のひずみや鹿児島が抱える基地問題なども。刺繍家の壽福ヤス子さんは、自身が体験したコロナ前後の劇的な変化と心境をストレートに布に綴り、揺れる時代に迷いながらも生きていく態度が共感を生みます。政治的な手芸部は3月8日国際女性デーの東京ウィメンズマーチで行進するために、インターネットで参加を呼びかけ、全国から集まった108人による小さな手芸パーツを繋げて一つのバナーに仕立てています。実際に様々なデモの場で使用されているものです。これは美術作品ではなく市民運動により生まれた表現ですが、「反戦」や「人権」など一つひとつ切実なメッセージがこめられています。手芸は長らく「非美術的」で「女性的」なものとされてきましたが、AIが闊歩する現代に、人の手の痕跡をそのまま残し伝える手芸本来の力を余すことなく見せつけてくれます。ささやかな展覧会ですが、それぞれの表現がどこかの誰かに寄り添うことができればと思います。
本展キュレーター 原田真紀
〈3955日の孤独〉2021年 【壽福ヤス子】さん
世界情勢や、コロナによって経験した日々の切実な感情を家族の記憶と重ねて針に託し、刺しゅうで表現を試みる。
【さめしまことえ】さんの作品↓
ジェンダーや原発など社会問題を背景とした作品を制作。
参加型も多く手掛ける。鹿児島の小さな出版社「燦燦舎」を営む。
〈生存〉2023年バナー【政治的な手芸部】
無害で力がなく、個人的な趣味と思われがちな手芸の手法を用いて、「政治的な」メッセージを含んだバナーを作るプロジェクト。
レトロフ千歳は、鹿児島市役所前にあるビルで、その2階フロアが展示会場でした。
市役所前の通りを歩いていて、目に止まった展示を知らせる「象るふるまい」のチラシ。
古くて、狭い階段を上がる。映像などで見るパリの街角ギャラリーをなんとなく・・・思いおこさせてくれる雰囲気。
ドアを開けると、一目で見渡せるほどの程よい感じの作品数。
ちょうど作家さんとキュレーターさんも在席中で、展示作品の説明をきっかけにおしゃべりに花を咲かせてしまいました。
大きな美術館で、たくさんの作品を見ることが美術鑑賞だと思っていたのですが、今回の展示会は、まるで日常に溶けこんだような、生活の一部として在る展示会でした。
それは、きっと日常でも気軽に立ち寄れる場所と、作家さんの想いを絞り込んだ作品の展示数(買い物ついでに鑑賞可能)、そして、作家さんとの対話。
その対話から生まれてくるものはこの混沌とした社会を伴に生きようとしている人がいるのだ、ということを知ったこと。
これからもそんな展示会に足を運んでみよう。
南日本新聞 編集局日誌 「同時代を生きるアート」
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