1927年、当時の朝鮮で生まれた山本清さんが、軍隊に志願し、水上特攻兵として、出発することなく、1945年8月15日に終戦をむかえました。
これはその終戦前に出会ったクロという犬とのお話です。
山本さんは、朝鮮に住んでいるとき、ここに登場するクロという犬とそっくりな犬を飼っていたそうです。そのことが、福岡でのクロとの出会いを決定的なものとし、その後クロと過ごした日々が、ずっと山本さんの中に刻まれています。
クロと一緒に過ごした日々をどうしても書き残したいという思いから、書かれた手紙の文章をほとんどそのまま形にしましたものが、このお話です。
山本さんは、このお話の結末をハッピーエンド的なフィクションで終わらせることを提案されました。しかし、私はあえて、その事実のままに終わらせました。一体、クロはどこに行ってしまったのでしょうか?
もしかしたら、飢えた人に捕まってしまったのかもしれません。あるいは、以前の飼い主の人と出会えたのかもしれません。
山下 春美
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