「ライダイハン問題」 ~戦争と性暴力について~

2024年

ライダイハン問題        瀬下 三留

英国BBC 2020年4月報道「1968年ー何百人もの女性を悩ませた年」リー・リュオン

 ベトナム戦争当時の韓国兵によるベトナム女性への性的暴行を特集で取り上げている「1968ー何百人もの女性を悩ませ年」の記事で、韓国軍兵士から被害を受けた2人のベトナム女性の境遇を伝えていた。

 このようにベトナム戦争時に、韓国軍兵士から現地の女性は性的暴行を受けて、その後生まれた混血児は「ライダイハン」の蔑称で呼ばれ、人数は定かではないが5000〜3万人と言われている。
民間団体「ライダイハンのための正義」が国連人権理事会による調査や韓国側の謝罪を求めている。

ライダイハンとは     ウィキペディア「ライダイハン」より一部転載

 「ベトナム戦争に参戦した韓国軍兵士や南ベトナムに出稼ぎに行った、韓国人労働者らと現地ベトナム人女性との間に生まれた混血児を指す。
 ライダイハンらは父親からの扶養義務を果たされず、ベトナムに置き去りにされたままである。
その人数は、最小5000人から最大3万人との諸説ある。」

韓国・ベトナム両政府による調査が行われないまま、放置されてきたことにより、正確な人数も判明していない。
ライダイハンは、敵国の子どもとしてベトナム社会から差別を受け、貧困に苦しんでいる。
ベトナムはベトナム社会主義共和国の名前の通り、社会主義国であるため、その母親らは敵国と通じていたとして、財産没収、投獄、思想教育など弾圧された。

現在のベトナム政府は、経済発展を優先し韓国との二国間の友好関係維持を原則的立場として、謝罪要求やライダイハンの名誉回復、支援などは行っていない。

このようなライダイハンの現状が続く中、2013年に米国ジャーナリストのジェフリーケイト氏は、ニューズウィーク誌に「韓国が戦争犯罪を認めない訳」の中で以下のように寄稿している。
「ただでさえ、東アジアは緊張しているのに、日本と韓国の保守強硬派は互いの国の過去を暴き、そっちの方が酷いと非難の応酬をしている」。

 日韓の因縁は、日本統治時代にさかのぼる。
その時代の恨みが昂じて、アメリカは原爆で戦争を終わらせずに、日本を徹底的に打ちのめせば良かった、といった書き込みもネット上では見られる。

 ベトナム戦争時、韓国は30万人もの兵士を南ベトナムに送り込んだ。韓国軍の非情さは米軍の残虐行為を超えていた。
その際に、韓国兵が多数のベトナム女性を凌辱し、そのベトナム女性から生まれたのが混血児である”ライダイハン”である。

 日本政府は統治時代の事については、韓国政府の要求に基づいて概ね謝罪している。
それが韓国が納得しているか、していないかは別であるが。
しかし、韓国政府は過去の蛮行を認めようとしていない。
韓国国防省広報官は「そういった事例があったら、とっくに公になっていた。我が軍は朝鮮半島の共産化を食い止めるため戦い、規律正しく任務を果たした。ベトナム女性への性的搾取は一切なかった。」とも語っている。

 しかし、1980年代後半までは韓国は軍事政権下にあったため、批判的な報道は一切なかった。米軍によるソンミ村虐殺事件、枯葉剤使用等も韓国では報道されていなかった。

ライダイハン問題は人権に関わる重大問題であるため、韓国政府の良心が解決を左右する。

 戦時下においては、性の問題は必ず浮き彫りになってくる。そこで犠牲になるのが必ず女性であり、その子どもたちである。
 国際化が進み、外国にルーツを持つ子どもや父母の人種が違うカップルのもとに生まれてきた、ハーフの子どもが珍しくない昨今になっていて、決して混血に偏見などない中で、韓国とベトナム間で発生している、ライダイハン問題ではその子どもたちの名誉回復のためにも、早急に両国同士で解決するようにしていただきたい。

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